大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(ラ)306号 決定

抗告人は、「原決定を取消す。相手方は業として原決定末尾添付目録記載の意匠を有する虫籠を製造し、使用し、譲渡し、貸渡し、譲渡もしくは貸渡のために展示してはならない。申立費用及び抗告費用は、相手方の負担とする。」との裁判を求め、抗告の理由として別紙のとおり記載のある書面を提出した。

そこで、原決定摘示にかかる抗告人(債権者)の仮処分申請の趣旨、理由及び疎明資料に基づいて、本件仮処分申請の当否を審究すると、相手方(債務者)の製造販売にかかる虫籠の意匠(原決定添付目録表示の構成)は、抗告人(債権者)が意匠権を有し、虫籠を意匠にかかる物品とする登録意匠(原決定添付意匠公報写表示の構成)に類似するということができない。その理由は、原決定の理由と同一であるから、これを引用する。

この点に関連する抗告理由に言及すると、その要旨は、(一)本件登録意匠及び相手方製品の意匠において籠体の上面部に蛇の目状の凸レンズが嵌着されている格子模様部分は、昆虫生態の観察鑑賞という虫籠の用途にふさわしく、また、新奇でもあるから、両意匠について、全体的観察によつて審美感の類否を考えるにしても、その構成中、最も看者の注意を惹くのは、むしろ右部分であつて、原決定認定のように籠体の外側輪郭形状ではなく、また、(二)右形状はいずれも基本的には截頭円錐形の範疇に属し、しかも、両意匠は、いずれも籠体の上面、周側面、底面にほぼ同様の格子組模様を表し、上面に蛇の目状のレンズ部分を表した点で、ほぼ一致し、その一致部分は、籠体全体の極めて高い割合を占めるとともに外側輪郭を含めて互いに有機的に結合し、渾然一体として融合しているから、全体的に観察すれば、外側輪郭形状の相違のごときは第二次的な部分的差異にすぎず、原決定認定のように、これによつて両意匠を類似しないとするのは当たらない、というにある。しかしながら、意匠の類否を判断する場合、意匠にかかる物品の構造、機能は外観に表れた限度においてのみ意味があるにすぎないから、本件の両意匠において籠体の上面部に蛇の目状レンズを表した部分が虫籠の用途にふさわしい構造、機能を有するというだけで、これを看者の注意が最も赴くところと認むべきいわれはないのみならず、その部分の形状、模様も、籠体の全体的観察において最も看者の注意を惹くほどのものとは認めがたく、籠体の外側輪郭形状の相違に意匠の類否の焦点が集ることを否定することはできない。また、両意匠における籠体の各面に表された格子組模様は虫籠の意匠としては極めてありふれた構成であるから、両意匠がこの点の構成を共通にしていても、籠体の外側輪郭形状の相違を無視すべきいわれはなく、むしろ、その点の相違から生じる審美感の差から眼を覆うことはできない。以上の認定、判断に牴触する疎甲第二三号証(鑑定書)記載の意見は採用するに足りない。

してみると、本件仮処分申請は、結局、被保全権利の存在につき疎明がないことに帰着し、この場合、疎明に代えて保証を立てさせて仮処分命令を発することも相当ではないから、右仮処分申請を却下した原決定は相当であつて、本件抗告は理由がない。よつて、その申立を棄却すべきものとする。

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